土地の境界について
土地の境界は、土地と土地の接するところと定義されます。
接するところは点ですが土地が「物」であるとすれば、その範囲を大きさで示さなければなりません。
すなわち、接する点でつないだ閉合型の外周が境界線となり、これが土地の概念です。
私ども土地家屋調査士が土地の「境界」を考える場合は、もう少し具体的に掘り下げる必要があります。
1.筆界の定義
筆界(ひっかい)とは、不動産登記法上の換言すれば公法上の境界です。

一筆の土地は、私的な取引に際しての単位になります。
他方、固定資産税や都市計画税を課す際等の公法上の単位にもなります。
不動産登記法では、連続する土地を人為的に区分して一つの区画を作り、各々に番号すなわち地番をつけています。

そして、一つの地番の及ぶ範囲を一筆(いっぴつ)の土地といい、ある地番を付された土地と隣接する別の地番を付された土地の境界を筆界といいます。
法的に境界という場合は、このように「ある地番を付された土地と隣接する別の地番を付された土地を区分する公法上の線」、つまり一筆の土地の範囲を示す線(筆界)をいいます。

一筆の土地を区分して使用しているとき、その使用範囲を区分する線は広い意味では境界であるが、通常いわれるところの境界ではありません。

境界は、ある地番を付された土地と隣接する別の地番が付された土地を区分する公法上の線です。
この線は最初に地番が付された時や後に合筆や分筆によって新たな地番が付されたときに固定され2本あったり移動したりすることは決してないということになります。

また、一筆の土地を分筆することなく、単に使用範囲を区分することは、その土地の所有者もしくは使用権隈を有するものが任意になしうるところであるが、地番を異にする隣接した土地と土地の境という意味での境界は、連続する土地を区分する線であり、公法上のものであるので、たとえ隣接する土地の所有者が合意しても、境界を勝手に移動させることはできないのである。
  ※判例
「相隣者との間で境界を定めた事実があっても、これをもって、その一筆の土地の固有の境界自体は移動する物ではない。」 (最判昭42.12.26)
「土地の境界は公法上のものであって、関係当事者の合意で左右することのできない性質のものである」
(東京高判昭37.7.10)
「土地の地番と地番との境界は公法上のものであって関係当事者の合意で左右することのできない性質のものである」(盛岡地一関支判昭40.7.1)
  ※参考
封建時代は、田畑から税(年貢)を徴収するためたびたび検地を行いました。
検地の結果を記載したのが「検地帳」で田畑の所在、面積、等級(品位)、生産高(石高)及び所持者名が記載(登録)されています。これだけの項目を一筆で書くところから、一個の土地を「一筆」とよぶようになりました。
2.筆界と所有権界等
原則として、筆界と所有権界は同一であるはずです。
ただし、地目界の筆界は所有権界とはなりませんし、時効取得の成立した所有権界とは異なる場合があります。
なぜ、原則的に同一かといえば、表示の登記制度は権利の客体を明確にするためのものであり、その手段として不動産登記法で地番を付している訳ですから、地番と地番の境界すなわち筆界は、権利の境すなわちち所有権界にもなります。
もちろん、権利の境は所有権界のみならず、借地権界や地上権界、地役権界もあります。これらの境界は、全て分筆し地番を付すことが望ましいのはいうまでもありません。
私共調査士が特に注意しなければならないことは、現地における占有界を所有権界、もしくは筆界と誤認しないことです。
3、筆界確認の意義
私共調査士の憲法は、申すまでもなく不動産登記法であり、第一にこれに従わなければなりません。

したがって、土地の境界を明確にして欲しいと依頼された場合、調査士のするべきことは、土地の数ある境界(前述の所有権界等)の中から、筆界を確認することであり、依頼者が求めているのもあくまで筆界なのです。
調査士は、筆界の持つ意味、創設された目的とその根拠などを確認し対応しています。

すなわち筆界確認には、それらを区分する根拠となった公図の測量や作図の精度、作成された目的や根拠を十分調査し、現地における筆界確認方法を検討します。
そして現地に於いては、占有状況及び境界標の埋設状況、基準点(公共基準点、道路基準点)の配点状況を総合的に判断し、更には関係人の証言なども十分考慮に入れて調査を進めます。

いってみれば調査士にとって、筆界確認とは、机上(公図)と現地の境界との整合であり、法17条地図の備付の無い場合には、最も重要かつ困難な問題であり、法と現実の矛盾を埋めていく作業でもあるのです。
4、筆界を現地に復元する方法
法務局備付の公図を現地に復元するには前述の対応が必要でありケースバイケースではありますが、一般的には公図の精度(測量・作図)と現地の既設境界標の埋設状況が決め手となってきます。

公図についていえば現地が先にあって例えば借地や占有区域により分筆が成されたのか、分譲地のように広大な一筆の土地を辺長や面積を特定して分筆等成されたのか、又その時の許容精度はどのくらいか、既設境界標については、埋設状況ならびに管理状況、更に、公図記載の辺長・面積との整合性や公共用地(道路用地等)の確保、直線条件の調整も必要です。

そして万一、公図と現地が不合した場合その原因は何かを徹底的に追究し公図と現地のどちらが正しいのか判断し選択します。
法務局備付の公図記載の辺長や既設境界標を鵜呑みにし小範囲の調査で一方的に復元することは真の筆界復元とはいえないのです。
5、北海道における境界確定の処理方法
本州方面の地図の中には、辺長が記載されていないものもあると聞きますが、それだけに現地の境界を尊重する必要があると思われます。

歴史の浅い北海道は、開拓当時、何町歩とか何百間といった旧度量衡で、数量、距離を定めて、公的機関である北海道庁が創設した地図があります。
これが、その後の基本地図とされている連絡査定図です。現在、登記所に備え付けられている地積測量図にも、辺長の記載や表示がなされていることから、現地と比較して差異が生じたときなど、本州には無い混乱を招くことがあります。

本道では、公図の持つ役割の中でも、筆界の位置を現地に特定出来る機能を果たしているか否かが、重要な問題になってきます。
近年、測量器具等が著しく発達し、遠距離の測定も容易になってきました。したがって、公共測量はもちろんのこと民間の測量においても、公共基準点との結び付けが必要になってきています。幸い、旭川市内には、国家三角点から結び付けられた公共基準点(1級基準点、2級基準点)が設置されています。
それは、筆界点を公共的位置づけとして数値によって表すという目的だけではなく、既存の成果との照合または自己作業上の錯誤の発見等に役立つなど、数多くの成果をもたらしています。

特に北海道では、大正末期から昭和初期にかけて、北海道庁により実施された土地連絡調査時の連絡図が、今なお重要な資料図・公図として使用されていることと、更にこれらの図面が、公共点から位置付けられているので、目的によっては、必ず連絡図を公共基準点から復元しなければ、境界の確定が出来ないのです。
したがって、用地確定作業の流れの中で、本州の現況主義といわれるものと異なって、本道独特の数値式復元方法ともいえる測量技術が行われています。

また不動産登記法に基づく法務局備付地積測量図等にしても、権利の保護を十分果たすために各筆界点は、誰でも復元できる方法をとらなければ意味の無いことであり、ただ形状だけを登記するなど、安易な考え方を続けると境界が不明確となり、常に紛争が付きまとう懸念があります。
6、街区内の境界確定の具体的処理方法
公共基準点から位置付けられた道路基準点(道路中心点)及び街区の頂点を算出した後、街区全体の距離が公図の名筆の合計距離との関係で、許容誤差内で整合しているか否かの見極めが、第一の要件であり、また、道路区域線(公道)の復元に誤りは無いか、関係者の立会はどうか等、管理官公庁備付資料を精査し、正しい結論を出すことが必要です。

官公署といえども一地権者であり、説得に足る資料があれば、是正することはやぶさかではないのです。
したがって、道路区域を頭から正しいものとして、無理に公図を復元することは、正しいとはいえません。

このようにして求めた筆界点と既設境界標や現況とに許容誤差を超える位置ずれが見られる場合には、隣接土地所有者との現地立会の際、先に述べた借地権界なのか、地上権界なのか、または、時効取得が成立しているのか等、これらの占有状況について利害関係人等相互の事実確認をおこない、その結果、特段の理由が無い場合は、隣接土地所有者の承諾を得たうえ、正しい筆界点に既設境界標を改埋します。この承諾を得ますと時効の中断ができ、その援用を受けることが無くなります。又、境界標の無いところには、永久標を埋設することが本道における実務上の最終段階での重要な作業であり、したがって、「現地立会は最後にありき」なのです。
7、許容誤差(公差)について
既設の境界標と、求めた正しくあるべき筆界点とに、位置のずれが見られた場合、何が何でも正しい筆界点に既設の境界標を改埋するのかといえばそうではなく、どんなに正確に境界標、または、道路基準標を埋設したとしてもいくらかの誤差がありますし、また、時間の経過により、多少の移動があることを考慮しなければなりません。

測量学では、これを許容誤差といって、物理的にも防止することは困難とされています。今日では、測量の技術が著しく進歩して、この許容誤差もどんどん小さく出来るようになりましたが、しかしそれでも、位置誤差としては7cmくらいまでは認められています。

また、地積測量図に距離を記載する際は、実務上は、先述したように、公図距離と実測距離の差を配分して加減し、
筆界点を求めて座標値を与え、現地にその成果で打杭し求積しますが、これらの精査については、角度や距離を測る際に個人差、機械差、気候などにより、測量者及び測量ごとに微少の誤差が生じ、数値の差が出ることが予想されます。

このような場合実務上では、誤差の範囲内であれば図面上の距離の表示は、、実測上の距離または従来の公図の距離のどちらでもかまわなく、又、地積についても同じように誤差の範囲が認められており、準則第25条4項の限度内であればあえて地図・地積・辺長の訂正をする必要はありません。